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ハルムス 無題の詩 

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おれは もう 走って 走って 走って
疲れた
腰かけに腰かけ、走ることは
やめた

空を見れば 飛んでいるのは
カラス、
それから また 飛んでいるのは
カラス、
それから また 飛んでいるのは
カラス、
それから また 飛んでいるのは
カラス、
何故 おれは 飛ばないのだろう?
ああ、なんたる無念!

座っているのは うんざり
ちょっと飛びたくなった

助走をつけて とびあがる
えい!と叫んで
足を ばたんと 動かして
手をふれ
泳げ 飛び上がれ。 

鷹が おれを 守ってくれる
風は 追い風
下には 川と森
上には 暗雲の空。

20060222175031.jpg


飛ぶのは うんざり
ちょっと歩きたくなった
とこ
とこ
とこ
とこ
歩きたくなった。

庭園を散策
お花を集めて
林檎の木に登るよ
空に林檎の実を 投げる
空に林檎の実を 投げる
めくら めっぽう あてずっぽう
まっすぐ 空に ぶつかって
まっすぐ 雲を つきぬける。

投げるのは うんざり
ちょっと水浴びが したくなった
ざぶ
ざぶ
ざぶ
ざぶ
ちょっと水浴びが したくなった。

みてごらん
みてごらん
どうやって 水のなか おれが泳ぐか
どうやって 足をバタバタさせて
それを頭で 助けるか。

人々は岸辺で叫ぶ

「魚 魚 魚 魚
 魚 水の住人たち
 これらの 魚たち
 魚たちでさえ
 あんたより うまくは 泳げないよ! 」
 
 俺は言う

「水浴びには うんざり
小さな川で 泳ぐなんて
とんで はねて
砂の上に寝転がるほうがましさ。」

水浴びは うんざり
おれは 岸辺を走る
右に 左に
まっすぐ走る ぐるぐる走る
もう おれは 走って 走って 走って
疲れた
腰かけに腰かけて、走るのは
やめた

以下 同文

(1929年5月17日)


ハルムス初期の傑作。
若干24歳のときの作品です。
子供のために書いた詩だそうですが。
ハルムスは子供のための詩人として認知されていました。
大人用に書いた作品は、なかなか検閲を通らなかったためです。

それにしてもこの詩、
なんだか身につまされますねえ。
私もすぐに、色々なことにうんざりしちゃって、
興味の赴くまま、
「続ける」と言うことが一切出来ないで来たので、
この詩のもつ明るい調子の裏側の、
破滅的というか、悲劇性への暗示というか、
まあそんなこと全然なくとも、
少なくともこの空回りの徒労感と言うか、
ちょっと怖い詩だなあとも思うのです。
もっともこれは子供のために書かれた詩ですから、
そんな深読みしないで
あっはっは、変な詩!と読んでいくのが
ハルムスの意図だったかもしれませんが。
もしかしたら人生の詩かもしれないし、
もしかしたら冒険ってこういうものかもしれないし、
読む人によって意味合いは全然違うのでしょうね。
もしこの詩を読んで何かおかしな感想を持った人がいたら、
ちょっと聞いてみたい気がします。

この詩は演劇学校の授業でも取り上げられて、
ちょっと懐かしい詩でもあります。
ひとつひとつのパラグラフに動作を決めて、
5人くらいのグループでカノン方式で朗読をしてゆくのです。
注意力と、表現力、また想像力の訓練でした。
・・・楽しかったなあ、あの頃は。
今でも楽しいですけど。

これから私は多摩センターの映画館に行って
『ミュンヘン』のレイトショーを観るのです。
へへへ、またしても極楽ですな。それでは。

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