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糟糠の妻

この間日本に帰った時に、
母の友達2人と母と私と4人で、
会食の機会がありました。
ずいぶん長い間の知り合いで、
私の父のことやなんかも知っている人たちです。

で、色々な話になりまして、
それぞれの結婚生活の話もでたのです。
これがまた、傑作でね。

母ともう一人は結婚を大失敗して、離婚しているのです。
ところが一人は良い人と結婚して、本当にうまくいっているのですって。
このうまく行っている人が、
うまく行ってない二人をガンガンに斬っていくのです。
「当然よ、あんな人!」
「ろくでもない!」
「良い所なんかどこにもないじゃない!」
で、斬られた本人たちは、
めちゃくちゃ言われながらゲラゲラ笑っているのです。
やっぱり年を経た女たちは、
なかなか良い味を出してくるもんだなあと思いましたね。

それで、良い結婚をした人の話なのですが、
彼女の馴れ初めのなんかの話も出まして、
当然私は興味津々で聞き入った訳です。

なんでもね、
初めて彼(結婚相手)の家にお邪魔した時のことだそうです。
彼の家は狭い六畳一間みたいなところで、
家の真ん中がなんだかカーテンで仕切ってあって、
その片方のど真ん中に、
ちゃぶ台だかテーブルだかが置いてあったんですって。
で、そのちゃぶ台だかテーブルの上に御櫃があって、
そこには大豆の蒸かしたのが入っていたそうです。
それを示して彼の曰く。

自分には親からもらった金が少しある。
そして自分は働くのは嫌いである。
そして自分は一生この部屋に住むので構わない。
なので、そのお金で一生ここの部屋に住めるように、
いつもこの大豆を食っているのである。


とね。

私はこの話、どうなるのかと固唾を飲みましたよ。
だって今までの話の中で、
良い所などそれこそ一つもないじゃありませんか?
どういうどんでん返しが待ってるんだろう、これから。
そう思っていたら、
母の友人が言うのです。

「それで私、それがすっごく気に入ってね。
 とても良いなと思って、是非結婚しましょうっていったの」

・・・・・。
どんでん返しはないのです。
もう、そのまんまで好きだったってことなのですよ。

「昔はそういうの、普通だったのよ。
 お金とかそういうんじゃなくてね。
 私は糟糠の妻みたいのにすごく憧れていたから、
 よし、じゃあ私がこの人を支えて、
 私が稼いでこの人を食べさせてあげようって、
 すごく燃えたわ!」

そんなような話でした。
すると、母が言うのです。

「私だって、お父さんと結婚するとき、
 お金の事なんか全然考えなかったわ」

すると、母のもう一人の友人も言うのです。

「私だって!」

そして三人が各々口にするのは、

「昔はそれが普通だったのよねええ」

いやあ、非常に勉強になった夜でした。
もちろん三人いるうちの二人までは離婚している訳ですし、
特にうちの母など父の経済力のなさには悩まされっ放し、
泥沼の別れ話を繰り広げた訳ですから、
一概に金の事を考えずに結婚するのが良いという訳ではありません。

でも、私みたいにちゃんと用心して貧乏なロシア人とはつきあわず、
経済力ありそうなヨーロピアン男子を選んだって、
結局は3年間で2回も失業しちゃうわけですしね。
人生はどうなるか本当にわからないのだから、
打算や条件なんかで人を選んだって結局無意味だねって話ですね。

それにしてもこの夜に、
三人の口から何度も出た糟糠の妻という言葉が、
最近の私の頭を何度もよぎるのです。
糟糠の妻ブームが、私のなかで来ているのです。

糟糠の妻とはご存知、
中国の歴史書『後漢書(宋弘伝)』に出てくる、
「糟糠の妻は堂より下さず」に由来する言葉です。
糟糠とは米ぬか・米カスのことで、
そんな物くらいしか食べられない貧しい時代を共にした妻は、
立身出世しても追い出すわけにはいかない、
という意味だそうです。

私のオランダ人が失業してから、
私は自分の正しい在り方は何かとずっと考えていましたが、
答はおそらく糟糠にあり。
多分これですよ。

糟糠の妻的に考えれば、
要するに、今は私のオランダ人に恩を売る大チャンス
そして、二人の愛を至高の愛に高める大チャンスです。
ああそうか、神様はだからこのタイミングで彼を失業させたのかな。

私は早速オランダ人に言いました。

「あのねえ、失業保険も減額になって、
 しかもすぐには貰えないでしょ?
 部屋代、光熱費、大変でしょ?
 私は最近、すごく稼いでるから、
 ちょっとぐらい仕事が見つからなくても大丈夫。
 これから私が生活費入れるからさ」

オランダ人はすると物凄く嬉しそうな顔で言いました。

「あ、そうしてくれる?
 助かるわ。
 月300ユーロくれるとありがたい」

・・・300ユーロか。
・・・ううむ。
・・・痛いね。

私は俄かに感じ出した胸の痛みを押し殺し、
笑顔で言いました。

「うん!いいよ。もちろんだよ。
 いま振り込むね!」

しかし、これは一種の愛への投資なのです。
私はケチですが、
私のオランダ人もケチです。
だから、今まで出さなくても済んだ金を出すことには大変な心の痛みを伴います。
でも、私も彼も両方がそうだから、
彼には私のこの犠牲精神がきっと理解できると思うのです。
その結果どうなるか。
来年の七月に、
私と私のオランダ人は出会ってから15年目を迎えます。
記念年なのです。
そこへ向けて愛は燃え上がっていくのではないか。
そして、私のオランダ人は一生私に頭が上がらなくなるのではないか。
穏やかになり、優しくなり、かいがいしくなるのではないか。
これがいわゆる、糟糠作戦という奴です。

チェスではオランダ人に絶対勝てない私ですが、
人生のチェスではまあ、負ける気がしないですよね。

で、今日も仕事から帰ってくると、
彼氏が薄汚い恰好で出て来て、
セーターで何やら手を拭きながら、
「おかえりなさい」なんて言う訳です。
「あれ?今日は面接じゃなかったの?」
「うん・・・」

俯く彼に、何やら不穏な雰囲気を感じ、
私は言いました。

「・・・行かなかったの?」
「いや、そうじゃないんだけど・・・」

私は大急ぎで言いました。

「まあ、いいよ。
 大丈夫だよ。何とかなるって。
 私が何とか生活の面倒は見るから、
 しばらくゆっくりと考えなよ。
 そのうち、きっとあなたにも良い仕事が見つかるよ」

いやあ、気持ちが良かったです。
なんだか日本婦道記のなかに入ったみたいな気持ちでした。
私にもこんな綺麗事が言えたんですね。
これから私の糟糠作戦が始まっていくでしょう。
来年の七月に、作戦はピークを迎える予定です。

と思ったら。

「見つかったよ」
「ん?」
「今日面接いったら、即決だった。
 明日から仕事に行くよ」
「・・・おめでとう」

糟糠作戦、終了。

「ところでさ、
 生活費を入れる件だけど。
 やっぱり今は君、収入結構あるでしょ?
 僕は新しい仕事、ちょっとサラリーが下がったんだよ。
 月300ユーロ、やっぱり入れてくれる?」

・・・・。
ええええええー。

「いや、ちょっと待ってよ・・・それはさ・・・それは・・・」

散々ごねた挙句、
収入の一割を生活費として上納することで許してもらえました。
糟糠作戦で負けたのはどうやら私だったようです。
チキショー!(コウメ太夫)


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