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男の戦い-オカマVSジジイ

一昨日の朝、
アムステルダムの国立博物館で仕事がありまして、
朝からぼんやり疲れている頭でトラムに乗っていたわけです。
最近私は何度目かのトモフスキーブームが来ていまして、
「我に返る隙間を埋めろ」とか「不惑」とか「疎遠」とか、
とにかく心にジャストミートしがちな彼の言葉を、
耳栓型イヤホンをがっちり耳に刺して、
周囲の音を完全シャットアウトして聞きながら、
窓際の壁にもたれていたわけです。

するとね、
すぐ斜め向かいに切符売り場のカウンターがあったのですが、
そこに座っている口髭生やしたじいさんが、
なにやら怒鳴っている訳です。
それにたいして、
スリムジーンズにジャンパー姿のラテン系の若者が何かを言い返しています。

オランダのトラムというのは、
真ん中らへんに車掌さんのカウンター、というか、切符売り場的なところがあって、
そこに人が座っています。
その車掌さんのカウンターの目の前には出口専用のドアがあるんですけど、
若い男はそこに立っていたのです。

まあ人が怒鳴り合っている姿はよく見かけますし、
私ももうロシアとオランダで大抵すれっからしになっていますから、
ああ、疲れるなあ・・・と思いながら、
また音楽の音量を上げました。

でも、この口げんかがなかなか終わらないんですよね。
そのうち爺さんが大きく手を振りかぶって外を指差しながら何か怒鳴り、
若者がグルンと頭を振りながら、
まるでダンスのように足を踏み鳴らすに至って、
私の朝がたの死んだ心の中にも、興味が湧いてきました。
そこで私は、イヤホンを耳から取ったのです。

「おい!お前、オランダ語がわからんのか。
 英語すら満足にわからんのか。
 そこには立っていちゃいけないって言ってるだろう!」

意地悪そうな、尊大そうな切符係の爺さんは、
大声で怒鳴る訳です。

「朝の九時から何怒ってるのよ?
 英語はわかってるわ。
 どうしてここにいちゃいけないのかわからないだけよ」

と、これも大声の英語で、若者が言います。
恰好は普通のラテン系の男の子だし、
スキー帽をかぶっているのでわかりませんでしたが、
喋り方は典型的なお姉さんです。
ぐるん、と頭を大きく回して、
そのあと、あごをツーンとあげて、見栄を切りながら怒鳴ります。

「それがルールなんだよ!
 そこにいると邪魔なんだ!
 向こうに行け!
 オランダのルールを守れないんなら、
 さっさと自分の国に帰れ!」

意地悪爺さんはラテン系オネエよりちょっとたどたどしい英語で、
しかし居丈高に、かなり失礼なことを言うのです。
するとオネエは、

「いやよ!
 ここをどくのもイヤだし、
 オランダから帰るのもイヤよ! 
 だってここは僕の場所なんだから!
 い・や・よ!」

と、どーんと片足で床を踏みました。
私の隣にいた男の人が笑いだし、
つられて私も笑い、
周りじゅうがニヤニヤしだしました。
なんだか、お芝居みたいで面白かったんですよね。

するとね、
周り中の視線を集めている自分に気がついたのか、
そのラテン系オネエが水を得た魚のように生き生きし出したのです。

「お前はgekか!」
と爺さんがオランダ語で叫ぶと、
(gekというのは気が狂っている人のことです)、
おそらくオランダ語を知らない彼(だか彼女だか)は、
自分の国の言葉で何やらポララララとシャウトしました。
ポルトガル語とか、スパニッシュとか、そんな感じ。
それから彼または彼女は、
何故かかぶっていたスキー帽を大きな仕草でバアッと取って、
長い髪をバサアッと振るように、頭をぐるんっと回したのです。
でも長い髪なんかなくて、帽子の下はごく普通の短髪でした。
なぜ帽子をあんな派手に取ったのかは今でも不明。
でも帽子を取ると、結構ハンサムだってことがわかりましたから、
そのためだったのかな。それでもって、

「ねえ、ベイビー、
 be happy, be happy!
 朝の9時から何を怒っているの?
 僕はいつでもハッピーよ。
 Please be happy!
ハッピーでいなさいよ、ベイビー」

という訳です。
真っ赤になって怒っている爺さんを、
しなをつくってベイビーと呼びはじめたのです。
そして、また大きな仕草で腕をきゅっと組むと、
くるん!と可愛くドアのほうへ身体を向け、
爺さんのほうを顔だけで振り向くのです。
もう女優さんみたいに優雅にね。

「いいから、向こうへ行け!
 そこの扉はお前のためには開けんぞ!
 開かないんだから、向こうへ行け!」

「そんなの知ってるわよ。
 僕はここに立ちたいから立っているだけ。
 ベイビー、そんなに怒鳴らないで。
 どうせ絶対にどかないんだから!」

周りももうその時にはクスクス声を出して笑っているし、
爺さんはもう呆れたという感じで、両手を広げて肩をすくめました。
ラテン系オネエはしっかりと自分の両腕を抱きしめて、
扉の窓のところに固くなって、動かなくなりました。

マグナプラザの前、
ダム広場の後ろ側でラテン系オネエは降りていきましたが、
その時に、

「ベイビー、またね。
 今日一日をハッピーで過ごして。
 あなたが楽しく働けるように祈っているわ!」

と大声で言って、投げキスをして去っていきました。
まわりはもう大爆笑です。

するとね、居丈高になって、真っ赤になって怒っていた爺さんが、
頭を振って笑ったのです。
仕方ないな、みたいな感じで。

いやあ、あのオカマは天晴だと思いました。
あの反骨精神とユーモアとね。
私だったら退け!って怒鳴られただけで、
怖くてすぐ言う事聞いちゃうのに。
普通のそこらへんのラテン系の男だったら、
喧嘩して大声出して、はた迷惑なだけなのに。
あのお姉さんは、自分の意地を通しつつ、
最後は意地悪なジジイを笑わせている訳です。
さすが難しい人生を歩んできただけありますよ。
いや、あの人の人生を知らないけど。

私はこの日、このシーンを繰り返し思い出しては、
笑っていたのです。
それでちょっと乗り切れたのです。

そう、お芝居って言うのは、
本当の意味での演劇的って言うのは、
こういう事なんだなあ、と思ったことでした。

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