咳が出る、咳が
二十代に好酸球性肺炎というのにかかってから、
私は何かというと咳をするようになりました。
咳喘息とかっていうらしいですけどね。
原因は不明で、
数多くのアレルギーテストをしましたが、
その度に何の結果も出てこない。
ただ、咳は出るのだし、
血液検査をすれば好酸球の値が高くなっているし、
気管支拡張剤なんて効かなくて、
やっぱりステロイドの吸引薬を処方されればスカッと収まる。
まあ、アレルギーなのですね。
そんなこんなで、この間、
耳鼻科医からアヴァミスという点鼻薬を処方されまして、
それを二週間ほど使ったら、
咳が止まらなくなったわけですが。
その時点で薬をやめても、
咳だけは止まらないまま、
二か月ほどが経過しました。
夜になると咳が激しくなって、
吐きそうになるし、
第一仕事に激しく差し支えたのでね、
ここはもう仕方がないから、
もう一度耳鼻科のところへ行ったわけです。
呼吸器科に行くべきではないかと思ったのですけど、
耳鼻科でもらった薬が原因ですし、
一応、副作用のことでもわかるかなと思いましてね。
耳鼻科のお医者様、若くて素敵でしたしね。
まあそれに、
長年分からなかったアレルゲンが、
ようやく明らかになるんじゃないかと、
そういう期待もありました。
アヴァミスが原因で咳喘息が起こったのですから、
アヴァミスの成分でアレルギーテストをすればいいんじゃないかなって。
素人考えですが、
ま、そんなことを思いつつ、
私のオランダ人と一緒に耳鼻科に行ったのです。
そうしたらね、
耳鼻科のお医者様は困惑していらっしゃいましたね。
むしろ怒っていらっしゃいました。
アヴァミスが原因だなんて、
とんでもない言いがかりだと思ったらしいです。
「だけど、使い始めて三日で咳が出て、
一週間でひどくなって、
二週間でずっと咳しているようになったんですよ」
そう私が言いましたらね、
お医者様は苦笑しながらおっしゃいました。
「じゃあ、やめたらいいんじゃないですか?」
アシスタントと同じことを言うのです。
「ええ、二週間でやめました。
でも薬をやめても、咳が止まらないのです。
そのまま二か月が経ったので、
いくらなんでもおかしいと思ってここへきてるんですけど」
と私が言いましたら、
「やめても咳が出るなら、
それは薬が原因ではないってことですよね?」
と切り返してくる医者。
もう笑顔も何にもなくて、
クレーマーを撃退する態度そのものです。
それに対してオランダ語で、
「でも、アヴァミスの服用が起因となって、
私のアレルギー的な傾向の背中を押して、
血中の好酸球が増えて、
継続的に使用したものだから喘息を引き起こして、
今更やめても元に戻らないってことはないんですか」
と言い返せるほどの天才じゃないんでね。
「・・・でも、一応調べてほしいんですけど」
としか言えなかった訳です。
耳鼻科医は鼻で笑いましてね、
「さっきから咳払いをしていますね。
それが咳が長引く原因ですよ。
まずは咳払いをやめて、
咳が激しくなったらお水を飲んでください」
とおっしゃいました。
勿論私は、
その時点でね、
ああ、これは医者の分野が違ったな、
間違った医者のところへ来ちゃった。
ということは悟りましたよ。
そういえば昔、
好酸球性肺炎になった時も、
私はずっと隣の家の母の幼馴染だという耳鼻科に通って、
鼻炎の薬を処方されていました。
先生は耳鼻科医として名の高い人でしたが、
咳が出過ぎて、肺呼吸が出来なくて、
階段の踊り場ごとにしゃがみこんで肩で息をする私に、
「うーん。
風邪かなあ」
とずっとおっしゃってましたっけね。
なんといっても母の幼馴染なので、
薬代なんかはいらないよ、とおっしゃって、
山ほど貰う薬に全然お金を取らないのです。
私は大学生でしたし、素寒貧でしたから、ありがたくてね。
ずっと通い続けて、
その結果、
最終的によその医者でレントゲンを撮ってもらった時には、
片肺の半分くらいに水がたまって、
即日入院という有様でした。
「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!」
とその医者に言われましたよ。
まあ、ね。
耳鼻科の呪いとでも言いましょうかねえ。
それにしても、
耳鼻科だって同じアレルギーを扱うお医者さんでしょうに、
器官としての耳・鼻・咽喉を一歩でも離れると、
あれほど何にもわからなくなるものでしょうか。
「だけど、水を飲むとか、
咳払いをしないとかっていうことが、
二か月も続いている咳に対して有効だとは全然思えないので、
何か薬をください。
これは多分、アレルギー性の咳喘息だと思うので、
この薬が効くと思うんですけど。
処方箋だけでも書いてくれませんか」
といって私は、
昔、日本の医者に処方してもらったパルミコート200を見せました。
まあこんな風に見せたって医者はくれないに決まってますけど、
あんまり毎日咳き込むので、
苦しくてね。
ちゃんと考えられなくなっていましたよ。
緑の目の素敵なお医者様は、
またも苦笑しながら、
私の鼻にぐいぐいと管を指してきましてね、
「鼻は全然問題ないねえ」
などと、全然関係ない事を言うのです。
あれ?
私、いま、鼻の話してました?
とちょっとキョトンとするほど唐突にね。
しかもその管の入れ方が、やたらと乱暴で、
奥までグイグイ入ってきて、痛くてねえ。
明らかに仕返しっぽいのです。
素人が生半可な知識を振りかざして、
指図めいたことを言うのに我慢が出来なかったのでしょうね。
私もその気持ちはすごくわかるっていうか、
私が医者の立場だったら、
「お前は医者かよ(冷笑)」てやっぱり思ったと思います。
でも、じゃあ、
お医者様よう、
お前がこの咳を何とかしてくれよ。
ああ、もどかしいですね。
自分で処方箋が書けたらいいのに。
原因はわからないけど、
もしかしたらアヴァミスじゃないのかもしれないけど、
こんなの絶対、単なる咳喘息なのに。
ステロイド吸入すれば一発なのに。
「とくかくね、
アヴァミスにそんな副作用があるなんてことはどこにも書いてないし、
あなたの誤解だと思いますよ。
とりあえず、胃薬を処方しておきます」
とお医者様は言って、
すっかり敵同士みたいになって私たちは別れました。
彼氏と二人で、
帰りのトラムの中で、
あの若造!
あんな奴のところには二度と行かんぞ、
胃薬なんか要るもんかい。
と、散々罵りましてねえ、
まあお医者様というのは、
高給取りでもありますが、恨まれ屋でもありますね。
先生と言われる人々は恨みも買いやすいので、
それで高級を取るのかな、などと思ったことでありました。
あーあ、それにしても、
面倒くさいなあ。
また、呼吸器科にアポとって、
レントゲン取って、
血液検査して、
「一応」効かないとわかっている気管支拡張剤もらって、
ムダ金払って、
案の定聞かないでもう一度通院と言う、
あの一連の儀式を経た上でしか薬をもらえないのかしら。
めんどくさいな。
本当に。
もう、このまま咳で死んじゃおうかな。
と思っている今日この頃です。
私は何かというと咳をするようになりました。
咳喘息とかっていうらしいですけどね。
原因は不明で、
数多くのアレルギーテストをしましたが、
その度に何の結果も出てこない。
ただ、咳は出るのだし、
血液検査をすれば好酸球の値が高くなっているし、
気管支拡張剤なんて効かなくて、
やっぱりステロイドの吸引薬を処方されればスカッと収まる。
まあ、アレルギーなのですね。
そんなこんなで、この間、
耳鼻科医からアヴァミスという点鼻薬を処方されまして、
それを二週間ほど使ったら、
咳が止まらなくなったわけですが。
その時点で薬をやめても、
咳だけは止まらないまま、
二か月ほどが経過しました。
夜になると咳が激しくなって、
吐きそうになるし、
第一仕事に激しく差し支えたのでね、
ここはもう仕方がないから、
もう一度耳鼻科のところへ行ったわけです。
呼吸器科に行くべきではないかと思ったのですけど、
耳鼻科でもらった薬が原因ですし、
一応、副作用のことでもわかるかなと思いましてね。
まあそれに、
長年分からなかったアレルゲンが、
ようやく明らかになるんじゃないかと、
そういう期待もありました。
アヴァミスが原因で咳喘息が起こったのですから、
アヴァミスの成分でアレルギーテストをすればいいんじゃないかなって。
素人考えですが、
ま、そんなことを思いつつ、
私のオランダ人と一緒に耳鼻科に行ったのです。
そうしたらね、
耳鼻科のお医者様は困惑していらっしゃいましたね。
むしろ怒っていらっしゃいました。
アヴァミスが原因だなんて、
とんでもない言いがかりだと思ったらしいです。
「だけど、使い始めて三日で咳が出て、
一週間でひどくなって、
二週間でずっと咳しているようになったんですよ」
そう私が言いましたらね、
お医者様は苦笑しながらおっしゃいました。
「じゃあ、やめたらいいんじゃないですか?」
アシスタントと同じことを言うのです。
「ええ、二週間でやめました。
でも薬をやめても、咳が止まらないのです。
そのまま二か月が経ったので、
いくらなんでもおかしいと思ってここへきてるんですけど」
と私が言いましたら、
「やめても咳が出るなら、
それは薬が原因ではないってことですよね?」
と切り返してくる医者。
もう笑顔も何にもなくて、
クレーマーを撃退する態度そのものです。
それに対してオランダ語で、
「でも、アヴァミスの服用が起因となって、
私のアレルギー的な傾向の背中を押して、
血中の好酸球が増えて、
継続的に使用したものだから喘息を引き起こして、
今更やめても元に戻らないってことはないんですか」
と言い返せるほどの天才じゃないんでね。
「・・・でも、一応調べてほしいんですけど」
としか言えなかった訳です。
耳鼻科医は鼻で笑いましてね、
「さっきから咳払いをしていますね。
それが咳が長引く原因ですよ。
まずは咳払いをやめて、
咳が激しくなったらお水を飲んでください」
とおっしゃいました。
勿論私は、
その時点でね、
ああ、これは医者の分野が違ったな、
間違った医者のところへ来ちゃった。
ということは悟りましたよ。
そういえば昔、
好酸球性肺炎になった時も、
私はずっと隣の家の母の幼馴染だという耳鼻科に通って、
鼻炎の薬を処方されていました。
先生は耳鼻科医として名の高い人でしたが、
咳が出過ぎて、肺呼吸が出来なくて、
階段の踊り場ごとにしゃがみこんで肩で息をする私に、
「うーん。
風邪かなあ」
とずっとおっしゃってましたっけね。
なんといっても母の幼馴染なので、
薬代なんかはいらないよ、とおっしゃって、
山ほど貰う薬に全然お金を取らないのです。
私は大学生でしたし、素寒貧でしたから、ありがたくてね。
ずっと通い続けて、
その結果、
最終的によその医者でレントゲンを撮ってもらった時には、
片肺の半分くらいに水がたまって、
即日入院という有様でした。
「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!」
とその医者に言われましたよ。
まあ、ね。
耳鼻科の呪いとでも言いましょうかねえ。
それにしても、
耳鼻科だって同じアレルギーを扱うお医者さんでしょうに、
器官としての耳・鼻・咽喉を一歩でも離れると、
あれほど何にもわからなくなるものでしょうか。
「だけど、水を飲むとか、
咳払いをしないとかっていうことが、
二か月も続いている咳に対して有効だとは全然思えないので、
何か薬をください。
これは多分、アレルギー性の咳喘息だと思うので、
この薬が効くと思うんですけど。
処方箋だけでも書いてくれませんか」
といって私は、
昔、日本の医者に処方してもらったパルミコート200を見せました。
まあこんな風に見せたって医者はくれないに決まってますけど、
あんまり毎日咳き込むので、
苦しくてね。
ちゃんと考えられなくなっていましたよ。
緑の目の素敵なお医者様は、
またも苦笑しながら、
私の鼻にぐいぐいと管を指してきましてね、
「鼻は全然問題ないねえ」
などと、全然関係ない事を言うのです。
あれ?
私、いま、鼻の話してました?
とちょっとキョトンとするほど唐突にね。
しかもその管の入れ方が、やたらと乱暴で、
奥までグイグイ入ってきて、痛くてねえ。
明らかに仕返しっぽいのです。
素人が生半可な知識を振りかざして、
指図めいたことを言うのに我慢が出来なかったのでしょうね。
私もその気持ちはすごくわかるっていうか、
私が医者の立場だったら、
「お前は医者かよ(冷笑)」てやっぱり思ったと思います。
でも、じゃあ、
お医者様よう、
お前がこの咳を何とかしてくれよ。
ああ、もどかしいですね。
自分で処方箋が書けたらいいのに。
原因はわからないけど、
もしかしたらアヴァミスじゃないのかもしれないけど、
こんなの絶対、単なる咳喘息なのに。
ステロイド吸入すれば一発なのに。
「とくかくね、
アヴァミスにそんな副作用があるなんてことはどこにも書いてないし、
あなたの誤解だと思いますよ。
とりあえず、胃薬を処方しておきます」
とお医者様は言って、
すっかり敵同士みたいになって私たちは別れました。
彼氏と二人で、
帰りのトラムの中で、
あの若造!
あんな奴のところには二度と行かんぞ、
胃薬なんか要るもんかい。
と、散々罵りましてねえ、
まあお医者様というのは、
高給取りでもありますが、恨まれ屋でもありますね。
先生と言われる人々は恨みも買いやすいので、
それで高級を取るのかな、などと思ったことでありました。
あーあ、それにしても、
面倒くさいなあ。
また、呼吸器科にアポとって、
レントゲン取って、
血液検査して、
「一応」効かないとわかっている気管支拡張剤もらって、
ムダ金払って、
案の定聞かないでもう一度通院と言う、
あの一連の儀式を経た上でしか薬をもらえないのかしら。
めんどくさいな。
本当に。
もう、このまま咳で死んじゃおうかな。
と思っている今日この頃です。
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