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腋臭

最近オランダはお天気最高。
空気がきらきら光っています。
温かくて、コートが要らないくらい。
こんな日々が続けばいいのになあー。

ところで、唐突ですが、
私のオランダ人の同僚で、彼の斜め向かいに座っている若い女性が、
すごい腋臭だそうなのです。
彼女が彼と同じ部署に配属になった当初、
私のオランダ人は毎日彼女の話をしていました。
それが、「腋臭日記」とでも名付けたらよいのか、

「今日は午前中は臭くなかったけど、お昼頃から匂いがすごくなり始めた」
「今日は彼女、実地研修があって、もどってきたら臭かった」
「今日は朝からひどい匂いだった」
「今日は臭くなかった!」

などと、毎日のルーティーンとして彼女の匂いの報告を行うので、
このひと実は彼女に惚れてるんじゃないかしら
などと疑惑を感じるくらいでしたよ。

なんでもね、とてつもない匂いなんですって。
たまねぎみたいな。
部屋中がその匂いで一杯になって、
特に午後なんかは鼻を何かで覆いたくなるほど臭いのですって。
冬の間は汗をそれほどかかないからたいしたことないけど、
こんなにお天気が良くて温かいと、またぞろ腋臭が問題になってき始めるのかな。

こういう話題になったとき、
私はいつも、自分がどういう態度をとるべきか、わからなくなります。
どう返事をすれば良いのかしら、と考えてしまうのです。

日本人は大体皆そうだと思いますが、

「人の身体のこと、
特に自分ではどうしようもないことについては、
あれこれ言うものではありませんよ。」

という教育を受けていると思います。
私の場合、このバイアスはかなり強固でして、
人に対して「くさいよ!」と言ってしまう人とか時々いますが、
驚いて目をみはってしまいます。
「そ、そんなこと言っていいのっっ????」
という感じで。

だけど、口に出さない、ということは、言語化しない、ということで、
言語化しないということは、私の場合、思考しないということです。
それで、「くさいなあ」と漠然と感じていても、
それ以上考えないようにするものだから、
『腋臭臭』にたいする定見・スタンダードな姿勢というものがないのです。

この季節になって、私のオランダ人が定例の『腋臭日記』を始めるとき、
毎日なんと返答してよいものやら、わからなくなるのは、そのせいだと思います。
相もかわらず、スタンプみたいに、
「そんなこと言っちゃだめだよ。自分じゃどうしようもないんだから。」
と繰り返して、
あれ、私本当にそんなこと言いたいのかなと自問自答する日々です。
まあ、誰に言っても波風の立たない返答であることは確かですけどね。
これはあくまでも建前であり、どこかに自分の本音があるはずなのですが、
でも、本音はなんだろうな。
頭の中を探すけれど、わからないです。
というか、こういう話題を降られた場合、
みんなどういうリアクションを取っているんだろう?

「本当に臭い人間っていやだよね。早く部署が変わるといいね」
彼氏同情説。
「彼女も大変だよね。自分がそんな腋臭があったらぞっとしちゃう」
彼女同情説。
「鼻せんをつめれば?」
彼氏側問題解決策探索説。
「デオドラントを変えて見るようにいえば?」
「腋臭って手術でなおるそうだよ」
彼女側解決策探索説。
あと、ええと。
思いつかない。

でも、なんだかどれもファンタジーのない話というか、
会話が弾まないなあ。
私とオランダ人の間の、ごくプライベートな会話なんだから、
もっと自由に何でも話していいはずなんだけど、
だから、もっとドカンドカン笑いが起きるような方向で話したいんだけど、
やっぱりそれをやると私の心の中の小学校の先生が、
「そういうことを考えちゃだめでしょ?」
と私の目をまっすぐ見つめて言うのです。
そして私は、何がどうおかしいのかもわからなくなる。

なんでこんな話をしているのかというと、
これが言ってみれば、私の身辺にある思考停止の一代表例ってことなのかなあと、
思ったからなのです。
つまらないことだけど(笑

私の母親は、私が随分小さい頃から、
「言ってはいけないことなど何もない。
 正直に発言して波風が立つのは良いことである。
 そこで起こった議論によって、
人は定見や共通認識をつくりあげ、
時には軌道修正していくのだから。」
と言っていました。
でも、それとともに、やっぱり、
「人の外見的な特徴や、
 その人が自分ではどうしようもない弱点をあげつらうのは、
下品なことである」
ということも言っているわけです。
どっちも正しく立派に聞こえるけれど、
発言の本質をつきつめれば、
「何でも言え」「言っちゃいけないことはある」ということで、
矛盾しているわけです。
うむー。建前と本音。
私が成長過程で、解決してこなかった事柄はたくさんあるのですが、
これなんかもその一つですねえ。

一番怖いのは、
私は結構「良い子ちゃん」だから、
建前を本気で信じ込んでしまって、それ以上考えず、
本音がどこにあるか、自分でも天地神明に誓ってわからなくなることだと思います。
そして、本音で話す他者を不愉快に感じるようになる。

よく、政治家の『不適切』な発言が、暴言・失言として問題になることがあります。
女性蔑視的な発言とか、
人種差別的な発言とか、
あと、歴史観や軍隊問題とか?
そして、それがスキャンダルになって、
「ああいうことを公の場で言うようでは、政治家としてダメ。」
と言われたりします。
市民が、政治家に、
建前と本音を使い分けることを「政治家の資質」として要求しているわけです。
これがねえ、私には不思議なのです。
言ったというのは、思っているということで、
その政治家は、その思考方法に従って行動しているということです。
普段は問題発言をしないように気をつけているのでしょうから、
建前で市民とは話しつつ、本音にしたがって政策を実行しているわけです。
黙って。
こちらの方がよほど怖いことですよねえ?

彼の失言・暴言は、彼の本音が聞ける、国民にとっては滅多にない貴重な機会だと思うのですよ。

例えば一人の政治家が
「女が子供を生めなくなってもずっと生きているのは悪ですなあ」
とか、
「知的障害者っていうのは、あれ、人格あるのかねえ」
とか言ってしまった場合、
周りはその発言にたいして、「政治をやる人が、そんな事言っていいのっ!」
と激怒するわけですが、
でも、
私は、そんなことを思っているという事を言ってくれてありがとうと、
むしろ感謝してしかるべきだと思います。

だって国内でその政治家一人だけがそういう意見を保持しているわけではなくて、
やっぱり同じ事を思っている爺さんたちは少なからずいると思うのです。
そして、そういう権力を持った爺さんたちが、
口には出さない本音思考にしたがって、実際に国を運営しているから、
どんどん弱者にとって住みにくい世の中になってきたわけでしょう。

いや、こういう言い方は爺さんたちに不公平かな。
実際には爺さんに限らず、若い人も年よりも、おばさんたちも老婆たちも、
中年男性も中年女性も、
こういう事を何の悪意もなく考えて(感じて?)いる人たちはいるでしょうし、
しかもその考えの妥当性がどの程度のものかなんて検証している人たちは少ないでしょう。
けれど、その根拠の具体的に提示されていない、言語化されていないあいまいな『感覚』が、
空気をつくっていく。
そして、その「言わないけど」「みんなが思っている」的な風聞が、
ネットみたいな匿名の世界で爆発するのかな。
しかも議論ではなく、匿名同士の罵りあいみたいな形で。

でもすべての世代・性別・人種を超える、ある種の共通認識を作り上げるには、
国レベルで活発に議論することを通して以外にないと思うのです。
そして、その議論の頻度がその国の民度の高低を決めると思うし、
言ってみれば、その国の形を作っていくのだと思います。
失言・暴言は、その議論に大切なテーマ=問題意識を与えてくれるというわけです。
だから発言内容にたいする論理的な反駁ではなく、
「それを口に出したこと」自体についての批判というのは、とても奇妙だという気がします。
「言ってはいけないことはない」というのは、
そういう意味では正しい。

でも、政治家を批判するときには問題はごくクリアだけれども、
自分の周囲にあることに関連付けたとたん、
なんだか私は煮え切らなくなるんですよねー。
だって、やっぱり色々な事がもっとデリケートなんだもの。

腋臭は、誰もそのことについて触れなくても、
その場に存在していて、
毎日毎日、
「くさいなあ」と苦痛に思っている同僚がいるわけです。
そして、腋臭を持っている女性も、まだうら若い娘さんなわけですし、
きっと毎日毎日、
「私、今日におっているかなあ」と気にしていると思うのです。
どちらにとっても苦痛な状態。
そういう状況があったとして、
では、その場にいる人たちはそれをどう解決していくのだろうか。
黙っていることが一番品がよくて正しいことだろうか。
言っても仕方ないから、消去法で、黙っているしかないのか。
それとももっと別の、タブーを越えたなにかがあるのだろうか。
どういう態度が正しいのだろうか。

あー・・・これ、永遠のテーマだわ(笑)。





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1. はじめまして。

読ませていただきました。
すごくよくわかって同感しました。
カチカさんはとても洗練されて
おやさしい心を持ってらっしゃると思います。
指摘しにくいものですよね…
僕は他人の臭いは気になりますし
電車などで臭い息とかかぐと
たまらなくイヤなときがあります。
逆に自分の臭いも気になるほうで
腋臭な気がして、席をかわるわけにいかない状況
たとえば会社などの場合、
自分がそうなって迷惑かけていないか
とても怖く感じるようになり
それだけが原因じゃないけど
数年前からは自宅で仕事しています。
臭いは迷惑なので気をつけたいです。

2. minaさん

はじめまして。コメントありがとうございます。

自宅でのお仕事ですか。いいですねー。
私の夢は子供の頃からずっと「一人で出来る仕事をすること」だったのですが、残念ながら未だかなわず。実力が伴わないのです。

体臭は本当にデリケートな問題ですよね。
ただ、私自身はずっと鼻炎持ちだったし、人の体臭には全然敏感じゃなくて、あまり気にならないほうです。
人が日常生活の中で他人に迷惑をかけることは、もともと生きているだけで人間なんて迷惑なんだから、いいのではないかと思うのですけどね。人に迷惑をかけられもかけも出来ない世界は、随分窮屈だという気がします。
お互いそれをユーモアに転化できさえすればいいのになあ、と思うのです。
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