悲憤

昨日のことですが。
朝早く起きて仕事に出かけて、
電車に座ってウトウトしていたら、
私のオランダ人が大きなクレーン車の写真を送って来るのです。

「ワオ、すごいぜ!うちの前にすごく大きなクレーン車が来てる!」

「へえ、何故?」と返事をしたら、オランダ人は、
「うちの裏庭の木を切ってるみたい」と応えました。

・・・うちの裏庭の木?
裏庭の木は、言ってもものすごい大木なのです。
うちはアパートの三階にあるのですが、その三階よりも更に背の高いトチの木でね。
良い具合に向かいの家から我が家を隠してくれるし、
春になると白い花が咲いてそれはきれいだし、
ハトやツバメが実をついばんで、
冬には雪が積もって白くなってそれは美しいのです。

・・・切ってる?
一体なぜ?

「どうして切るの」とオランダ人に聞きましたが、
「知らないよ!じゃ、僕も仕事に行ってくる」とのことで、そのままになりました。

そうして帰宅したら、
私の部屋の窓の外ががらーんとして、
向かい側の家の窓の向こうが逐一見えるのです。
普段は木の枝が隠してくれるので、
そのまま裸になって着替えたりするのですが、
私は慌ててカーテンを閉めました。

それから、だんだん腹が立ってきました。
たったの一日。
朝に仕事に出かけて、
夜に帰ってきたら、
それだけの時間で、あれだけの大木が、
まるでもとから何にも無かったかのように、
きれいさっぱりなくなっているのです。

「すごかったぜ!
 家の前にクレーンを止めて、
 男が裏庭の木に登って、枝をガンガン切っていくんだ。
 どうするのかなと思ったら、うちの屋根越しにクレーンを伸ばして、
 そこに放り込んで、屋根をまたいで木を引っこ抜いたんだ。 
 あんな事が出来るんだねえ」
 
オランダ人はトチの木が消えたってことについてはまったくの無関心。
技術のことばかり感心したように言うのです。

一体、何なのかしら。
クソロッテルダムの行政は、一体何の権利があってこんな事するのかな。
あのトチの木が、あれだけの大きさになるまでには、
何十年かかったと思ってるのだろうか。
ほんの数時間であの木を引っこ抜いたけれど、
じゃあ一日であれだけの大きさに出来るのかっていう話でね。

一体どうして、どういう理由で、
誰の要望で木を抜くことになったのかな。
うちのすぐ目の前の木なのに、
どうして意見ひとつ聞いてもらえなかったのかしら。
もし事前に「いいですか?」と聞いてもらえていたら、
絶対に「ダメです!!!!」と答えていたのに。

私のオランダ人だって、感心している暇があったら、
抗議のひとつもすればいいのに。

私はしばらくカンカンに怒りながら、
クレーン車のそばに駆けつけて、

「木を切らないで下さい!
 誰の許可ですか?
 木を切るの反対!」

両手を広げて木を守り、座り込みをする自分を空想しました。

・・・でもねえ、
現実にはいない間に木はいなくなってしまったし、
もし仮に家にいたとしても、
自分があの木にどれだけの権利を持っているかを考えると、
何にも言えなかった可能性98%くらいだし。

こうして書いている間にも目の前はぽっかり空間が広がっています。
やたらと見晴らしの良くなった裏庭が、
みすぼらしくて、寒々しくてね。

あの木、どうして切っちゃったのかな。
私はずいぶん寂しいです。



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