アンナ・メイ

やっとクリスマスが終わった!

いえーい。かんぱーい。


オランダに来てから、毎年年末はえらく気が重いものになりました。

だって、彼氏の家族が大集合するのです。

そうして私までその社交界に打って出なくてはならないのですもの。

長い夜を、内輪話やらジョークやら伝統やらでもって和気あいあいと満たしてゆく人々を、

お世辞笑いを浮かべながらぽかんと眺めているたった一人の外人の、

その心細さと言ったらね。


これが日本人の集団であったなら、

多少風儀の合わない人々でも私は中央に打って出て、

心をつかんでみせる、また多少は笑いを取ってみせる自信はありますよ。

でも、みんな外人で、金髪で青い目で、半分以上何を言っているのかわからない状態ですし。

しかも私のオランダ人の家族は、みな健康的で家族的で普通でまっとうなのです。

みんな馬鹿でかくて、子供でさえも私よりは大人っぽく社交的なのです。

なんだか引け目を感じてねえ。

なんていうの?広場の孤独っていうの?

まさにあれなのです。じっと我慢の2日間。

彼氏の実家に泊まらなくてはならないのも、超気が重いですよね。正直。


そんな時天恵のように、アムステルダムで現地ガイドの依頼が入りました。

よし、このクリスマスの日に、バイトを入れてやれ。

そして彼氏の実家での滞空時間を短くするのだ!


そんな事をクリスマス前に母にメールで意気揚々と話したら、

母から返信が来てね。


「クリスマスなんて、一年に一回でしょう?

 いやでも、なんとかつきあってあげなさい。

 いつかは順番で、あなたも老人になるのよ。

そうして、人にやってしまったことが自分に跳ね返ってくる。

 今の彼氏のご両親の運命は、あなたたちの運命になるのよ」


軽く説教ですよ。

しかもかなり湿った、しんねりと哀しそうな運命論つきの。

や、やめてよお母さん、これはそんな、そんな深刻な話じゃ・・・。


真面目な母の哀しき背中を念頭に、

今年のクリスマスの私はがんばりました。

去年と比べて、オランダ語もだいぶ進歩しましたしね。

デビューしたてのアイドルみたいな、満面の笑みと媚を体全体から発しつつ、

父親譲りの軽薄さで空騒ぎに打って出ました。

片言のオランダ語で、冗談さえ言おうとしましたからね。


彼氏母 「(彼氏に)あなた、それ、ずいぶん薄着だけど、寒くないの?」

彼氏  「いや、ぜんぜん平気さ」

私    「なにしろ彼は脂肪を厚く身に着けていますから」


・・・・しーん。

あれ?


彼氏母 「・・・え?なに?」

私    「いや、彼はね、脂肪があるから

彼氏母 「脂肪?」

私    「脂肪が守ってるから、寒くない」

彼氏  「どういうこと?」

私    「いや、だから、あんたはデブだから、脂肪が守ってくれるから」

彼氏母  「え?デブ?」


・・・・もしかして私、いま彼氏を家族の前で、ひどく愚弄しているところ?


とつぜん自分との対話をはじめながら黙り込んだ私を、

ガラス玉のような透き通った色の目で取り囲む人たち。

いや、わかるんですよ、私のオランダ語が悪いってことはね。でもね。


あーーーーー

早くこの時間終わってくれないかな(怒)。


まあね、クリスマスの別名は「カチカ殺し」ですからね。

仕方ありませんけど。


そんなクリスマスもようやっと終わりました。


いえーい。

かんぱーい。(もう一度)


クリスマスの日はご両親の家に泊まり、

その翌日、近くに住んでいる彼氏の弟が、三人目の娘を連れて家へ送りにきてくれました。

私たちは車を持っていないので、彼氏の家族の誰かが、家までいつも送ってくれるのです。


三人目の娘はアンナ・メイといって、

すごく可愛い、6歳の子供です。

ブロンドで、ものすごく目が大きくて、

5人兄弟のちょうど真ん中、しかも女の子3人のうちのひとりという、

なかなか親の愛のおこぼれに預かりにくいポジションのせいか、

なんとなく薄幸そうなオーラの漂っている子なのです。

この子のちょっとしおれた感じが、私は好きなのですけどね。


さあ出発という時、彼氏の弟が、その子の背中を押して、言うのです。


「ほらアンナ・メイ、カチカおばさんにいうことがあるんだろ?」


・・・え?私に?

アンナ・メイは私を上目遣いでチラチラみながら、もじもじと父親の手を握っています。


「さあさあ、アンナ・メイ、時間がないんだから」


内容によっては意味がわからない可能性あるんだけどという私の危惧をよそに、

アンナ・メイは父親に押し出されるようにして、


「私の名前を日本語で書いてください」


といいました。

なーんだ、そんなことか。

ほっ。

かわいいー


数多い彼女のおじさんおばさんたちのなかで、

私が飛びぬけて色物なことは間違いありません。

そのことに引け目を感じてばかりいましたが、

やっとその色物の真価が問われる日がきました。

さっそく張り切って書きましたよ。

アンナ・メイと、カタカナでね。


ところがこれがえらく成人男性たちに不評でね。

彼氏が、横から身を乗り出すようにして、

「あれ?これ日本語?もっと何か違うの、あったよね」

と不満げにいうのです。

「でも外国人の名前は、日本語でもアルファベットで書くから」

「これ、日本語っぽくないね」と彼氏の弟。

「アルファベットじゃないのはないの?」と彼氏の母親。

「これじゃつまらないよ」と彼氏。

アンナ・メイは無言。


四方八方からダメ出しを受け、あらためて私は漢字で書きなおしました。


杏奈・芽衣


どうでしょうか。

このtoo much な感じ。

いや、今から考えるとね、杏の字が、

否定の否になっていたのですよね。

それから芽衣の芽の字がちょっとザクザク横棒が多すぎて、

おかしな感じになってたな。

いやー、日常まったく文字を書かない環境の中で、

そんな急に言われても当て字なんか思いつけませんし、

思いついたところで書けませんよ。

私は暴走族じゃないんですから。


今から考えると、杏南・姪とかそういうほうが可愛かったなと思いますけど。

姪は彼氏の姪だから、みたいな。

メイっていう音に、可愛い漢字がないんですよねー。

何か心当たりがありますか?

芽衣って、わたしはあまり好きじゃないけど、

じゃあ他の漢字と思うと、なかなかないものです。

瞑とか、銘とか、名とか、明とか。

どれもいまいち。


まあでもとりあえず、「否奈・芽衣」でみんなが満足したので、

家まで彼氏の弟の車で送ってもらいました。

彼氏と弟が前に乗って、

私とアンナ・メイが後ろの座席に。


隣に子供が座っているというのは、プレッシャーですよね。

なにしろ、何にも話す事がない。

大人だったら言葉が多少通じなくても向こうが気を使ってくれますが、

子供にそんな甘えは通用しないしね。

6歳の子供に、「何いってんの、この人?」と思われたくないばかりに、

黙り込んでしまいました。

彼氏の弟の子供たちは、この点かなりよく躾けられていて、

こっちが黙り込んで向こうに興味を示さないと、

どこか別のところに自分の興味の対象を見つけて、自主独立してくれます。

5人も兄弟がいるせいか、大人に構われないことに慣れているのです。

うるさくもしつこくもないし、楽な子供たちです。


ところが、この日のアンナ・メイは、いつもと違いました。

ずーっと、隣で私のことをチラチラ観ているのです。

もう、ずーっ・・・・・と。

そして、視線に耐え切れずに私が彼女のほうをみると、

何か私が言うのを期待しているように、

ぐっと固唾を呑んで、大きな瞳で見つめてくるのです。

私が困って意味なく(完全に意味なく)にっこり微笑みかけると、

アンナ・メイははにかんだように笑い返して、窓の外へ目を移します。

ほっとした私も、反対のほうを向いて窓の外を見ますが、

しばらくするとまた、アンナ・メイの視線が・・・・・

横顔に痛い。

私になにを求めているの?

私ハ普通ノ外人アルヨ。


アンナ・メイの凝視になにか応えなければと、

おかしな義務感を駆り立てられ空回りしているうちに、

気分が悪くなってきました。

私は車に酔うのです。

三半規管が弱いのかなあと思うのですけど。

子供の頃は、車に乗ると85%の割合で吐いていました。

大人になってからはずいぶんマシになりましたけど、それでも、

車に乗っている間中吐き気をこらえていることがよくあります。

この家への帰り道では、本当に吐くかと思いましたよ。


でも、子供の前で醜態をみせてはいけないと、私はぐっと堪えたのです。

むしろアンナ・メイのほうに、また意味不明の微笑を意味なく投げかけたりね。

やっと家へたどり着いて、車から降りた時の、

その新鮮な空気の、おいしいこと、おいしいこと。

むさぼるように息を吸い込みました。

すると彼氏が、アパートのロビーで、

「車酔いしていた?」と不意に聞くのです。

「どうして?」と聞くと、

「だって顔が真っ青じゃないか。むちゃくちゃ白いぜ」とのことでした。

白人から顔が白いって言われるなんて、私はきっと南アでは特別白人ね。

なんてあてつけがましく思いながら(アパルトヘイトはオランダ語です)、

よろよろと部屋まで戻って、26日、27日と、爆睡して過ごしました。

あー、つかれた。


でもよかったー。やっとクリスマスが終わったわ。

これで人生の谷をひとつ越えたぜ。

いえーい。

かんぱーい。(3度目)






スポンサーサイト

幼な心の君

クリスマスが近くなってきましたね。

オランダも商店街はの花盛りです。

オランダは、12月5日のシンタ・クラウスの日と、普通のクリスマスと、二回クリスマスがあります。

12月5日は子供のためのクリスマスというか、

サンタクロース(シンタ・クラウス)がピーターという顔の真っ黒な従者を連れてきて、

子供たちにプレゼントを贈ります。

普通のクリスマスはおとなたちも含めて、家族が大集合して、

お互いにプレゼントを贈りあいます。

このプレゼントは、サンタクロースが持ってきてくれるのではなくて、

ケルストマンという人がもみの木の下に置いていってくれるようなのですが、

私はこの人のことが、未だによくわからなくてね。

ケルストマンって誰?

まあとにかくね、プレゼントを持っていって、相手の名前だけを書いて、

クリスマスツリー木の下においておくと、

パーティーの最中にひとつづつ開けられて、

贈られた相手は「ありがとう、ケルストマン」とお礼を言う、という行事です。


彼氏の家族は膨大にいますから、

誰が誰に何を贈るか、というのはくじで決められます。

今年、私と彼氏がプレゼントを贈るのは三人。

彼氏の弟(次男)、その嫁、その長女。


まあ彼氏の弟夫妻は問題ないとして、

困ったのはその長女です。


彼女は御年10歳になられる、魅惑の年頃のセクシーガールです。

いつお会いしてもブロンドのワンレングスをサラサラさせて、

身体にぴったりしたピンクの服を着て、

片耳にピアスを光らせて、

後ろからワラワラ4人の子供を従えて(*5人兄弟です)、

アンニュイに足を組んでおられるのです。


私と彼女が精神的にリンクしている部分は、今のところゼロですね。

彼女の精神風土はまったく見えていません。

人が他者を理解するのって、やっぱり自分の経験を通してだと思うのですけど、

私が10歳の頃って、全然こんなじゃなかったし


妹弟4人もいないし。

長女じゃないし。

ワンレンボディコンじゃなかったし。

ピアスしてなかったし。

ピンク嫌いだったし。

ブロンドじゃなかったし。


こんなエリート10歳に、

一体なにをプレゼントすればいいのかしら。

まったくわからないわ。

と、私は頭を抱えて、とりあえず彼女の母親に、メールを書きました。


「クリスマス、ぶっちゃけノエルにはうちがプレゼントをあげることになっているのだけれど、

何をあげればよいのか、見当もつきません。

母親のあなたなら、わかるでしょう?こっそり教えて頂戴?」

とね。


でも向こうも忙しいらしくて、ずっと返事が来なくてね。

まあこりゃ自分で考えるしかないかな、と、この間おもちゃ屋さんに行きました。

するとねえ、さすがヨーロッパのおもちゃ屋さん。

素敵なものが山ほどありましたよ。


きれいなお人形の数々。

きれいなお人形の衣装の数々。

木でできた美しい積み木や木馬や人形の家。

巨大な絵本とか、ビーズとか、背中に背負えるようになっている天使の羽とか。

大きな地球儀の模様のボールとか、

小さな家具や、本物の陶器でできた蔓模様のお茶セットとか。

私はもう、うっとりして、小一時間もそこでブラブラしていましたかねえ。

やっぱり、幾つになっても、おもちゃ屋さんというのは夢の国です。

大人買いというやつをしそうになりました。

自分用にね。

まあでもね、私はこう見えて、意外とやっぱり大人でしたよ。

天使の羽だけを買って、あとはきっぱりあきらめました。


彼氏の弟の長女にもやはり慎重になることにしました。

10歳くらいの年頃の子供にとって、気に入らないプレゼントをもらうことくらい、

狂気じみた怒りを誘うものはないことくらいはありませんからね。

クリスマスまでにはまだ間があるし、

ゆっくり考えたほうがいい。

この判断は大正解でした。

今日、彼氏の弟の嫁から手紙が来たのです。


「ノエルに聞いたら、クリスマスプレゼントはAnubis Wandklok がいいって言ってたわ。

 引越ししたら、新しい自分の部屋に飾りたいんですって。」


とのことでした。

こっそり教えてくれといったのに、ダイレクトに情報を聴取したらしい。

まあ、それだけに、これ以上ないほどの確かな情報が手に入りましたけどね。

まあ、サプライズとか、どうでもいいからね。


それにしても、Anubis Wandklok とは一体どういうものでしょうか?

意味がまったくわからず、彼氏に聞いてみたところ、

「うーん・・・時計みたいだけど・・・?」

と、やっぱりよくわからないみたい。

腕時計かな?

とりあえずインターネットで検索してみると。

ありました。

実に具体的なリクエストだったということが判明しましたよ。



ブローグニック どーん。



・・・・えええー。

これかー。

・・・・だっせー・・・・・。

なんでも、テレビシリーズのキャラクター商品みたいなんですけどね。

なに、この半端な感じは?

せっかくの新居の新しい部屋が、台無しにならないの?

・・・・あげたくないなあ。

こんなのを部屋に飾って毎日眺めていたらね、

それこそ情操教育に問題が生じますよ。


そんなことを彼氏に愚痴っていたら、彼氏が言うには。


「大人が欲しいものと子供が欲しいものはいつだって違うだろ?」


むううう。

そりゃそうね。


そうそう、私は子供の趣味の悪さみたいなこと、すっかり忘れていたのでした。


そういえば私だって子供の頃、

欲しいものはテレビやアニメや漫画のキャラクター商品ばかりだったな。

うちは女の子は一人だけだったので、

母親や祖母や何かの女のロマンが片っ端から私の上で爆発したわけですが、

片っ端から気に食わなかったのを覚えています。


今でも覚えているのが、7歳くらいの時のクリスマス。

祖母がクリスマスプレゼントを持って家に来てくれたことがありました。

家は貧乏で、しかも理想が高くて厳しいという、子供にとっては最低の組み合わせでしたから、

テレビもないし、おもちゃもたまにしか買ってもらえないし、漫画も禁止でした。

そんななかで、お祖母ちゃんがプレゼントを持ってやって来るというのは、

本当に本当に稀有なる機会で、わくわくして、天にも昇る気持ちなのです。

祖母は教育方針とかクソ食らえなので、なんでも買ってくれますしね。


そうして、期待ではちきれそうになりながら、プレゼントをあけてみたらば。


兄には、超合金の大きなロボット。

色々なところが折りたためるようになっている、日本製の、マジンガーみたいなの。

私には、祖母がヨーロッパで買ってきた、

彩色された木製のビーズが一杯入った箱。


あの時の、自分の驚愕と失望と、

こみあげる涙をぐううううっとこらえて、手が震えちゃう気持ちとか、

本当に昨日のことのように思い出せますよ。

わたしはリカちゃん人形的なものが欲しかったのです。

もうそこは忘れちゃったけど(笑)。

子供にとっては、ヨーロッパの高価な木製ハンドメイドビーズなんかより、

日本のおもちゃ屋で売っているチープな量産品のほうが、

二倍も三倍もよかったりするのです。

あの時、

「やっぱり私が女の子だからだ。

おばあちゃんはお兄ちゃんのほうが男の子だから好きなんだ(涙)」

と思ったのを覚えています。

兄は、もうそれこそ、まさに欲しいもののど真ん中をもらって、満面の笑顔でしたから。

今思えば、まさに反対なんでしょうけれどね。

あのビーズには、祖母の女の子としてのロマンがつまっていたのでしょうけど。


子供がほしいものと、大人があげたいものが、

こうも違うってどういうことなのでしょうね。

私も子供ができたら、こういう時計を子供が欲しがった時に、

すらっと「いいわよ。部屋に飾りなさい」と言えるようになるのだろうか。

いや、そうでもないのかな。

私の母親は、絶対にキャンディキャンディのプリントのピンクの靴を買ってくれませんでしたっけ。

懇願したのに。

そういう事を今でも覚えているっていうのも面白いですよね。


そんな事を考えつつ、まあ明日、おもちゃ屋さんに行って、

Anubis Wandklokとやらを探してきます。

やれやれ。

それにしても、ノエルは謎だわ。

やっぱり謎だわ。尽きせぬ謎の泉です。

小さな女の子って、不思議ですよね。


プロフィール

Kachika

Author:Kachika
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
26913位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
8825位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR